コラム
大庭貴宣 日本長老教会 北四日市キリスト教会牧師
「キリストのからだへ、永遠に神を喜ぶ歩みへ」
2010年にNHKスペシャル「無縁社会〜〝無縁死〟3万2千人の衝撃〜」が放送されました。行き場のない遺骨が「ゆうパック」で寺院に送られる。集められた遺骨は複数まとめられ、1つの箱に入れ収蔵される。
また2008年に40カ国を対象に「神の存在を信じるか」との調査が行われました。調査アンケートには「私は実際に神が存在することを知っており、神の存在に何の疑いも持っていない」との質問がありました。日本人の回答結果は、わずか4.4%で、40カ国中40位。つまり、ほとんどの日本人は、神が存在することを知らずに生きている。そして死を迎えるのです。
もちろん、これらのことだけで日本の状況を説明することはできません。けれども、私たちが生きる日本で、年間3万人以上の人たちが孤独な死を迎える。神の存在を知らないまま人生を終える人たちがいることに変わりはありません。
“孤独死”や“調査アンケート”と聞くと、あまり身近なことと感じないかもしれません。しかし「孤独のうちに生きる」あるいは「神さまを知らないまま死を迎える」と聞けば、神さまと出会う前の自分の姿がそこにあります。私たちが「以前の自分の姿」と言えるのは、だれかが「福音」を分かち合ってくれたからです。つまり、今の日本の状況を変えることができるのは「福音」しかありません。
では「福音を伝えましょう」となります。その際、聞こえるのは「日本での宣教は難しい」という声です。私も神学教育に11年、牧会に10年携わるなかで様々な困難を覚えました。しかし「宣教が難しい」と言い続け、ハードルを自分たちであげてしまうことがあるのではないでしょうか。
今、私たちが見るべきは、自らが作り出した虚像ではなく、目の前にある「以前の自分の姿」であると思います。孤独を抱えながら生きる人たち、神の存在を知らずに生きている人たち。1回の説教が、1節の聖句が語られるとき、主はそれを用いてくださる。実際、私もはじめて聞いた説教で、イエスさまを受けいれました。自らの口を通して、教会の説教で、そしてラジオで福音が語られ、孤独からキリストのからだへ、神を知らない歩みから永遠に神を喜ぶ歩みへと日本の人たちが導かれますように。