コラム
2013年11月巻頭言 津豊ヶ丘キリスト教会 服部滋樹師
「放送伝道に託された使命」
「あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい。」
ペテロの手紙 第一 3章15節b
2013年は、『ナルニア国物語』の原作者として著名なイギリスの英文学者 C. S. ルイスの没後50年の年にあたります。ルイスは1963年11月22に召天しました。それゆえ今年は彼の生涯と業績を記念して、英語圏を中心に種々の行事や事業が行われてきました。アリスター・マクグラス教授による新しい伝記の出版もその一つです。私はその新しい伝記を読みながら、ある出来事に改めて関心を引かれました。
第二次世界大戦の最中、ルイスはBBC(イギリス放送協会)の依頼を受けて、キリスト教信仰に関するラジオ講演を行いました。1941年8月から1944年4月の間、ルイスはラジオを通じて戦時下のイギリス国民に語りかけました。これらの講演は後に一冊の本としてまとめられ、1952年に出版されました。日本では『キリスト教の精髄』という書名で出版されています。
本書はラジオで語られた構成や内容、語り口を色濃く残しているとマクグラス教授は指摘します。戦時中、特に大都市圏において、人々は昼夜を問わず襲う空襲に死を恐怖しました。また生死の境で激しく価値観を揺さぶられ、今までの生き方を深く問われました。彼らはラジオ放送を通して、ルイスの平易な言葉遣いによる福音の説き明かしに耳を傾けたのでした。
空襲に価値観を揺さぶられたのが戦時下の人々ならば、情報と知識の爆撃による価値観の多元化で、人生の意味を見失っているのが現代人ではないでしょうか。ルイスがラジオを通じて拠りどころを失ったイギリス国民に「親しく」、「平易に」、しかし「深遠に」キリスト教の精髄を語りかけたように、今日の日本でもラジオ放送による同様の語りかけを神様は尊く豊かにお用いになるはずと私は考えます。なぜなら、キリスト教会にある希望について「説明を求める人」が大勢いるからです。放送伝道はその要請に応える使命を、戦時下だけでなく今日も、主イエス様から託されていると私は信じるのです。